みなさんは「恒産なくして恒心なし」という言葉を知っていますか。恒産なくして恒心なしとは孟子の言葉から出た慣用句で、安定した財産や収入、仕事がなければ落ち着いた心を保つことは難しい、という意味合いの言葉です。
日本では、お金に淡白で清廉に生きることがよしとされています。心構えは立派ですが一般の人間にはなかなか難しいことです。孟子はこの点について、人間はやはり安定した生活基盤を持たなければ安定した精神状態は保つことはできないという極めて現実的な言葉を発しています。
今回は、恒産なくして恒心なしという言葉、そしてこれを実現するための方法を解説します。
目次
恒産なければ恒心なし
恒産なければ恒心なし、とは人は安定した経済基盤と生活がなければ安定し落ち着いた心を持つことはできないという言葉です。言葉の原典は孟子の梁上編にある、「因無恒心。苟無恒心」の一文です。恒とは、変わらない、常に決まったものという意味で、「恒例」や「恒星」などに使われる文字です。
日本語では様々な表現によってこの一文が借用されています。もっとも代表的なものとしては、四字熟語の「恒産恒心」です。日本語ではほかにも以下のような表現でこの言葉が使われています。
- 恒産無ければ恒心無し
- 恒産なきものは恒心なし
- 恒産無き者は恒心無し
- 恒産無きものは恒心なし
- 恒産有る者は恒心有り
恒産なければ恒心なしの出典
恒産なければ恒心なしの出典は「孟子」からです。
原文は以下の通りです。
孟子曰、
無恒産而有恒心者、惟士為能。
若民則無恒産、因無恒心。
苟無恒心、放辟邪侈、無不為已。
及陥於罪、然後従而刑之、是罔民也。
焉有仁人在位、罔民而可為也。
是故、明君制民之産、必使仰足以事父母、俯足以畜妻子、楽歳終身飽、凶年免於死亡、然後駆而之善。
故民之従之也軽。
今也制民之産、仰不足以事父母、俯不足以畜妻子、楽歳終身苦、凶年不免於死亡。
此惟救死而恐不贍。
奚暇治礼義哉。
書き下し文
孟子曰はく、恒産無くして恒心有る者は、惟だ士のみ能くするを為す。民のごときは則ち恒産無ければ、因りて恒心無し。苟しくも恒心無ければ、放辟邪侈、為さざる無きのみ。
罪に陥るに及びて、然る後に従ひて之を刑するは、是れ民を罔するなり。焉くんぞ仁人位に在りて、民を罔するを為すべきこと有らんや。是の故に、明君は民の産を制するに、必ず仰ぎては以て父母に事ふるに足り、俯しては以て妻子を畜ふに足り、楽歳には終身飽き、凶年にも死亡を免れしめ、然る後駆りて善に之かしむ。
故に民の之に従ふや軽し。今や民の産を制するに、仰ぎては以て父母に事ふるに足らず、俯しては以て妻子を畜ふに足らず、楽歳にも終身苦しみ、凶年には死亡を免れざらしむ。此れ惟だ死を救ひて而も贍らざるを恐る。奚ぞ礼義を治むるに暇あらんや。と。
現代語訳
孟子が言った。安定的な経済基盤がなくても安定した心を持つことができるのはただ学問と教養のある人間だけである。一般人は安定した経済基盤がなければ安定した心、つまり道徳心は持つことはできない。
もし恒心がなければ、やりたい放題勝手気ままをしない人はいない。罪に陥ったら直ちにこれを罰するというのは人々を網で捕まえているようなものである。仁と徳があり高貴なくらいにある人がそのように民を捕えることがあるだろうか。
だからこそ、名君は民衆の生業を支えるため、頭を上げては父母に仕え、頭を下げては妻子を養い、豊作の際には十分に食事をし、凶作の時にも人を餓死させず、よって民衆をよく励ました。だから民はみな名君にはよく従ったものである。
だが、今は頭を上げては父母に仕えることもできず、頭を下げては妻子を満足に養うこともできず、豊作の際に苦しみ、凶作においては餓死せざるを得ない。このような状態ではどうして礼節を収める暇があろうか。
恒産なくして恒心なしの類義
恒産なくして恒心なしの類義には以下のようなものがあります。
- 衣食足りて栄辱を知る
- 衣食足りて礼節を知る
- 倉廩実ちて囹圄空し
- 倉廩実ちて礼節を知る
- 常の産なき時は常の心なし
- 富貴にして善をなし易く、貧賤にして功をなし難し
- 礼儀は富足に生ず
豊かな人生とは
豊かな人生とは一体何でしょうか。豊かな人生を次元別に分類し順に説明します。まずは飢餓の心配がないこと、つまり食べ物に困らないことです。そして暖かい服を着て暖かい寝床で寝ることができ寒さに凍えることがないこと。これらのような生命が脅かされない状態が
豊かな人生の最低限の要求です。
次に、安定した仕事や収入、ある程度の財産があり、老後も安定して生活できる見込みがあることこれも豊かな人生には必要ですね。
そして、家庭が円満で、家族の仲が良く、友達に恵まれ交友関係が豊かであることこれは生活の充足感をより高めてくれる重要な要素です。
趣味が多彩で人に評価をしてもらえること、これは仕事以外にも生きる価値、生き甲斐があるということです。趣味が人に評価される段階に至ると自己肯定感が高まり、人生の充足感はさらに高まります。
健康であることも豊かな人生の要件の一つです。お金がいくらあっても健康に不安があれば全然楽しくありません。
労働をしなくても収入があり、すべての時間を自由に使え、誰のいうことを聞く必要がない意思決定の自由があればもっといいです。生活費は時間と労働力を切り売りすれば誰でも簡単に手に入ります。その代わり自分の時間を失い、自分のために使われるべき労力と思考力が消耗します。それではあまり面白くないです。
豊かな人生は、働かなくても生活に困らない収入があり、24時間を自分の好きなように使え、誰にも命令されることなく自分がやりたいことを行いやりたくないことをしなくていい意思決定を持っていることです。
恒産の作り方
ここでは恒産の作り方を解説します。
まずは正社員で賃金を稼ぎ貯金する
恒産の第一ステップは安定し、なおかつ十分に貯蓄に回せるだけの収入を得ることです。それを作り出す方法として、会社に正社員として雇われるというのが最適です。
ベース級が高く、しっかり残業代が付き、残業時間もそこそこある仕事に就きましょう。寮や社宅がある会社に就職すれば住居費も節約できます。スーツで働く仕事はYシャツやスーツ、革靴にお金がかかるので、作業着を貸与してくれる仕事に就くほうが望ましいです。
ボーナスも年5か月くらいあればより好ましいです。そうすればお金の心配をしないで、毎月10万くらい、それとボーナス全額が余剰として生まれ、年間で最低200万円くらい資産を増やせます。
節約生活
正社員で賃金を手に入れながら、同時並行で節約生活をしましょう。会社の同僚との食事会やイベントは基本的に全部断りましょう。お金と時間がもったいないからです。飲み物は家で沸かしたお茶を水筒に入れて持っていき、外でジュースやコーヒーを買わないようにします。コンビニでのお買い物は厳禁です。
買い物は外国人技能実習生のたまり場になっている地域で最も安いスーパーの特価品で済ませます。あるいは大型スーパーの特化の日にプライベートブランドの食品を買いましょう。外食はせず月曜から日曜まで自炊で食事をしましょう。
時計はスマホをみればいいので不要車が必要な人は型落ちの中古の軽自動車を買いましょう。スマホは格安SIMを海外ブランドのアンドロイド端末に挿入して使いましょう。服はファストファッションで十分です。夏は扇風機、冬は厚着で過ごし光熱費を節約しましょう。
私は大学生のころの食費は、外食や友達との交友費をふくめて一か月1万円くらいでした。社会人になってもこれくらいまでは難なく行けると思います。
株式投資
労働収入によって種銭を作ったら、まずは証券会社に口座を開設して株式投資をしてみましょう。株式は売買単価が安いものだと数万円単位で購入できます。
配当利回り高い株や株主優待券で食事券やお買い物券、カタログギフトがもらえるものもありますので身近なものから買っていくことをお勧めします。株主優待で生活費術品をゲットできれば支出を抑えることにも貢献します。
100万程度の種銭で株式投資をしてももらえる配当金は年間で5万円程度ですが、1000万円程度の規模で株式投資をすると年間の配当金は50万円程度になります。4000万円あれば配当だけで年200万円の配当が発生します。4000万円は年間200万円の貯蓄から生み出せます。22歳から働くと42歳で4000万円が無理なく貯まります。
積立NISAやiDeCo、企業年金、持株会を利用する
株式投資は株式投資として行いながら、別枠で積立NISAとiDecoの運用をすることもお勧めです。毎月コツコツ積み立てれば老後に備える費用もたまっていきます。また勤務先に企業年金や持株会制度があればそれも利用して置きましょう。
自宅は中古物件を住宅ローンで買う
自宅について賃貸派、持ち家派という議論は続いていますが、私はどちらかといえば持家派です。自宅は住宅ローンをめいいっぱい借りてオーバーローンで購入することをお勧めします。理由は次の通りです。
- 金利が安いから
- 住宅ローン控除が使えるから
- キャッシュを残して次の発展に使えるから
- 残したキャッシュで資産運用ができて住宅ローンの元本までを補えるから
- 金融機関と取引関係ができることで信用が築けるから
また自宅を購入する際には、「新築」は絶対にやめてください。「自分が住みたいオーダーメイドの家」も絶対にやめてください。自宅を購入する際の指標は以下のようなものを考慮してください
- 市場価値に対して割安か
- 万人受けする間取りか
- リセールバリューはどうか
- 将来値上がりするかどうか
- 流動性が高く売りたいときにすぐ売り手が見つかるか
- 貸したいときにすぐ借りてが見つかりそうか
- 地価と不動産価格の趨勢
これらを見越して自宅を買えばまず後悔することはありません。
具体的などのような自宅がよいかというと、比較的築浅で主要駅徒歩5分以内の区分マンションがおすすめです。
不動産投資
300万円程度お金が貯まったら不動産投資にも挑戦しましょう。不動産投資はまとまった資金が必要で参入障壁が高い反面、間違った物件を購入しなければ安定してインカムゲインが得られるビジネスです。。頭金を用意し、買いたい物件概要をもって金融機関に相談に行けば、融資を受けることができますので少ない元手で大きな不動産を購入することも可能です。
株式投資やFX等の純投資では金融機関は融資を出してくれませんが、不動産賃貸事業という名の不動産投資には、銀行は融資をしてくれます。また、不動産投資では相応の経費も計上できます。物件購入にかかった手数料や保険、利子、維持管理費のほかに通信費や事務用品も経費で落とせます。
また不動産所得の赤字は給与所得と相殺できます。不動産投資は初年度に費用が掛かるため赤字になることが多いですがこの赤字は給与所得と相殺することにより本業の課税所得を減らすことができ、節税につながります。
初めは割安な中古区分マンションから始め、中古一戸建て、アパート一棟購入に進んでいけば、手残りキャッシュフローが給与所得を追い越す日はそう遠くありません。
プライベートカンパニー設立
本業と副業の合計所得が695万円を超えたら、副業を法人化しましょう。これまでの雑所得で確定申告を行っていた副業を法人化して行うということです。合同会社を設立し、法人で事業を経営すれば、累進課税ではなく一定率の法人税で課税されるため節税効果が期待できます。
また自宅を役員社宅として借りる形にすることで、家賃の一部を経費にできますし、通信費、社有車、小規模企業共済の積み立て、など様々な方法で経費が計上できます。
また法人化することで信用を獲得できるため金融機関からの融資が受けやすくなったりと様々なメリットがあります。副業が一定以上の規模になった場合には事業の法人化をすれば経営者という肩書を手に入れることも可能です。
恒産なくして恒心ありのまとめ
今回は中国の孟子から「恒産なくして恒心あり」について解説しました。中国の故事成語やことわざには、現代のわれわれも目から鱗が落ちるような格言が含まれています。幸せで安定した心で優雅に楽しく人生を過ごすには、安定した収入と十分な資産があることが望ましいということを、孟子は言っています。
人間は生まれたときは裸一貫です。恒産はみな生まれた後に才覚と工夫で作っていくものです。私は恒産を得て、恒産が恒産を再生産できるようになるまで20年という歳月をかけてしまいました。このブログを見ている皆さんのような才覚のある方なら、最短2年で、一生食べるに困らない恒産を作ることができると思います。
恒産があれば、人間は心にゆとりができ、自由を享受し、やりたくないことをやらず、付き合いたくない人間と関わらない本当の自由を手に入れることができます。
好きな所に住み、好きなことだけをし、やりたくないことはせず、関わりたくない人とは関わらず、そして何も困らず悠々と生きる。これは現実的に普通に可能です。やろうとしない人は実現しませんが、やろうとするは誰しもこの環境がやってきます。
恒産を作り、恒心がある人生を目指して皆さんいろいろ試行錯誤をし、快適で幸せな人生をつかみ取ってください。
今回のブログが皆様の幸せで充足に満ちた人生を実現するための参考になれば幸いです。