皆さんは自治体や民間企業は障害者を雇用する義務を負っていることをご存知でしょうか。
障害者雇用促進法は、自治体や民間企業に対して障害者を一定の割合で雇用する義務を課しています。
障害者はこの法律により、自治体や民間企業の障害者求人に応募できます。障害者雇用促進法を知り、この法律で定められた制度を活用すれば、障害者の方も安定した経済基盤を持ちながら社会に貢献し生きがいを感じることができるようになります。
今回は障害者雇用促進法の概要と障害者による障碍者雇用促進法による制度の活用方法について解説します。
今回は障害をお持ちのかたの失業保険、失業給付について解説します。
目次
障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法は、障害者の就業の安定を目指すために制定された法律です。障害者雇用促進法では事業者が障害者を雇用する義務や、合理的配慮の提供、差別の禁止などを定めています。
障害者雇用促進法の対象は障害者手帳を持つ人に限られているのが現状ですが、本来障害者雇用の促進を率先して行うべき公的機関が障害者雇用人数のの水増しを行うという社会問題も取りだたされる中、障碍者雇用促進法も不正の再発防止やさらなる障碍者雇用の促進のためたびたび法改正が行われています。
障害者雇用促進法の対象となる障害者
障害者雇用促進法では、障害者の定義を以下のように定めています。
身体障害や知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害により、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける者、あるいは職業生活を営むのが著しく困難な者。
となっています。これは具体的には以下のような方を指します。
- 身体障害者手帳保有者
- 療養手帳や知的障害者と判定する判定書などの保持者
- 精神障害者健康福祉手帳の保持者
障害者雇用促進法における法定雇用率について
障害者雇用促進法は企業や政府や地方自治体などは一定の雇用率で障害者を雇用しなければならないと定めています。2021年3月1日以降の障害者雇用促進法が定める法定雇用率は、
- 民間企業が2.3%
- 特殊法人や国、地方自治体は2.5%
- 教育委員会が2.4%
となっています。
民間企業は43.5人以上の規模の事業者は障害者を雇用する義務が発生します。
雇用率の計算方法について
障害者の雇用率の計算方法を簡単に解説します。障害者雇用率は
- 週30時間以上の常用労働者を1
- 週20時間以上30時間未満の短時間労働者が0.5
- 重度障害のある障害者を2
として計算します。
また精神障害者について以下の条件を両方満たす人は、短時間労働でも1として計算されます。
- 新規雇い入れから3年以内の人、精神障害者健康福祉手帳を取得し3年以内の人
- 2023年3月31日までに雇用され精神障害者健康福祉手帳を取得した人
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企業が障害者を雇用する際のポイント
企業は以下を考慮して障害者を雇用しています。企業が障害者を雇用するにあたって考慮するポイントを以下に解説します。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは就職困難者を雇用する企業が、ハローワークや職業紹介事業者の紹介で就職困難者を雇用した場合に受け取れる助成金です。企業は以下のような方を雇用した場合に助成金を受け取れます。
- 60歳以上の高年齢者
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 母子家庭の母
- 父子家庭の父
障害者雇用納付金
障害者雇用納付金は、常用労働者数が100人を超えており、障害者雇用促進法が定める法定雇用数を達成しない事業者が未達成人数1人に対して月5万円の納付を義務付けたものです。この納付金は、法定雇用率を達成している事業主の調整金や報奨金に充てられています。ですから事業者は障害者を納付金を払わなくてもいいように努力することになります。
障害者雇用調整金
障害者雇用調整金は、労働者数が100人を超えており、障害者法定雇用率を達成しているという2つの条件を満たした場合、達成人数1人分に対して1人超過するごとに月額2.7万円の調整金が支給されます。
障害者雇用報奨金
障害者雇用報奨金は、労働者数が100人以下で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が、雇用者の4%または6人のいずれか多い人数を上回る、という2つの条件を達成した場合に、これらの数値を上回った人数1人に対して月額2.1万円が支払われるものです。
特例給付金
特例給付金は、週20時間未満の短時間であれば就労可能な障害者を雇用する事業主に支給される給付金です。
- 労働時間が週10~20時間未満となる障害者を雇用する
- その労働者が1年を超えて雇用される見込みがある
という2つの条件を満たしている場合、障害者1人につき、
- 常用労働者数が100人超の事業主 :月額7,000円
- 常用労働者数が100人以下の事業主:月額5,000円
が支給されます。
改善指導
企業はハローワークに「障害者の雇い入れに関する計画書」を提出しなければなりません。この計画書に則り障害者の雇用を行わない事業者は、労働局と厚生労働省から企業名の公表を前提とした指導が入ることがあります。
もし雇い入れ計画書に対し勧告を受け、その後も改善が見られない場合は最悪の場合「企業名の公表」がされます。企業名が公表されると社会的信用が大きく失墜します。
企業名公表までの流れは以下の通りです。
事前告知
期日までに不足分の障害者雇用を行わなければ雇い入れ計画書の作成命令が発令される、という通告が来ます。
雇用計画命令
この期間内に障害者雇用を行えない場合は、雇用計画命令が発令され、「障害者の雇い入れに関する計画書」の提出指導が行われます。
特別指導
障害者の雇用が雇い入れ計画書通りに進まず、雇用率が全国平均雇用率を下回る場合、特別指導が行われます。
企業名の公表
上の指導によっても状況が改善品場合は厚生労働省の公式サイトで企業名が公表されます。
優良事業主としての認定制度
優良事業主としての認定制度は中小企業(従業員300人以下)を対象したものであり、優良企業に認定されると自社商品や広告に「認定マーク」を掲載することが許可され、日本政策金融公庫による低金利融資を受けることができるようになります。、
合理的配慮の提供の義務
企業や公共機関は、障害者が他の人と同じように生活ができるよう配慮をすることが義務づけられています。配慮の内容は具体的には定められておらず、障害者と事業者、周囲の人が協議し決めていくものであるとされています。
雇用の分野での差別的取り扱いの禁止
障害者雇用促進法では雇用における障害者に対する差別的取り扱いが禁止されています。
例えば、障害があることを理由による昇進差別、低い賃金の設定などです。
障害者雇用促進法の活用法
ここでは障害者が障害者雇用促進法を有利に活用する方法を解説します。
障害者雇用で公務員や上場企業の正社員になる
障害者雇用促進法により、企業は障害者雇用率を達成するため常に障害者を募集しています。ハローワークや障害者専用の転職エージェントなどを使えば公務員や上場企業の障害者枠の求人に応募できます。障害者雇用は障害者手帳を持っている人しか応募できないため、
一般の新卒採用や中途採用に比べて採用のハードルが低いことが特徴です。
これを利用すれば、一般枠ではなかなか就職できないような、国家公務員、県庁、政令指定都市の市役所や中核市の市役所、財団法人、特殊法人という公務員はもとより、メガバンク、外資系投資銀行、総合商社、グローバルメーカー、電力会社、JT、味の素などの高いシェアの高い企業までいろいろなところに就職ができます。
属性と福利厚生を手に入れることができる
公務員や大手企業に障害者雇用で就職しても、採用区分は正職員、正社員です。障害者雇用かどうかは自分から公言しない限り社外にもわかりませんし、障害者雇用について知っているのはおそらく人事部と直属の上司だけです。
それでも公務員や大手企業の正社員という属性と福利厚生を手に入れることができます。属性についてはあまりピンとこない方もいるかもしれませんが、住宅ローンを組んだり、副業で融資を受ける際には、かなり効いてきます。
特定の職業を例に出すのはあまりよくないかもしれませんが、例えばお祭りでリンゴ飴を売っている兄さんや天津甘栗かき回しているおっちゃんが住宅ローンを組もうとしても下りない可能性がありますが、公務員、NTT、電力会社、JR、トヨタ自動車、日本製鉄なら融資は通ってしまいます。
障害者雇用と一般雇用は業務内容と責任分担が違うのでそれに合わせて給与体系が異なることがあります。でも年間休日や各種手当、退職金規定、企業年金、社宅制度他様々な福利厚生まで区別が行われることはありません。公務員や大手企業の福利厚生を同じ待遇で享受できます。
楽な仕事に就ける
障害者雇用は仕事が楽です。責任ある仕事、重要な仕事は一般枠の人がやってくれます。障害者雇用の仕事は軽作業や、サポート業務がメインになります。残業もほとんどなく、定時に帰れます。追い込まれるような強いストレス、プレッシャーを受ける仕事は少ないです。
ですから費用対効果が高くなります。
途中から障害者枠に変更してもらえる
障害者枠は障害者求人に応募し採用された人だけに適用されるものではありません。勤務している間に病気になり、その後障害が残り障害者になった場合にも障害者枠として就業を続けることができます。その際には、合理的配慮を受けて働くことができます。
ですが、その際には待遇は変更されることなく、これまでと同じ基本給、職位が維持されることが多いです。それでも会社は障害者雇用促進法における障害者雇用率維持や調整金、社会貢献のために雇用を維持し、配慮された環境の中で本人の特性を生かしたポジションを見つけそこに配置して仕事を与えてくれます。
特例子会社への入社も可能
大手企業の場合、特例子会社という会社を設立し、そこで障害者雇用をする場合もあります。特例子会社は大手企業の子会社となり、親会社の業務を請け負う会社です。職場がバリアフリー化されていたり、障害特性に配慮が受けられたり、短時間勤務制度やフレックスタイム制度など体調の変化に応じた柔軟な働き方ができます。
昇進を断れる
精神疾患などで体調が安定しない場合は、障害者雇用であることを理由に昇進を断ることもできます。特にこれをうまく活用すれば残業代が出ない管理職への昇格を避けることができるます。
障害者雇用促進法のまとめ
今回は障害者雇用促進法について、それを求職者が要領よく活用する方法について解説しました。
法律は知るだけでは意味がありません。法律は、その内容を知り、それ自分にどのような利得を与えるかを考えそれを味方にしてうまく活用することで意味が見出されます。
障害者雇用促進法を知れば、有利な転職と属性、ぬるい労働環境、安定した生活環境が比較的少ない投下労力で手に入ります。つまりこれを能動的に活用すれば、費用対効果、つまり高い効用の生活を送ることができるということです。
障害者雇用問題や障害者に対する福祉政策の如何はその筋の専門家にお任せするにして、障害者雇用促進法を活用できる立場の人、活用できる可能性のある人はぜひ法律を味方につけて、自分の人生をより豊かで充実したものにするためにうまく使いましょう。
このブログが皆様の人生が豊かで充実したものにするための参考になれば幸いです。