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君主論を学ぼう ~権謀術数の教科書~

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皆さんは君主論という著作をご存知でしょうか。君主論はニッコロ・マキャベリが執筆した政治学の著作です。君主論は、国家、特に近隣諸国と衝突の絶えない緊張化の小国の君主がどのように振る舞い、権力を行使するべきかが書かれています。

君主論は国家元首のあるべき姿が描かれていますが、これを世界を相手とする個人と置き換えれば、自分がどの様にふるまい、権力を握り、それを行使すれば利得を最大化できるかのヒントとなります。

君主論の考え方は「マキャベリズム」と呼ばれ現代でも浸透しており、これを要約すると、現実を認識すること、目的のためには的確に手段を選ぶこと、となります。君主が倫理に囚われれば破滅をもたらすことについても警鐘を鳴らしてますとして、君主が倫理観、恩情などを持つことを否定し、悪徳を評されることを恐れてはならないことを強調しています。

今回は、ニッコロ・マキャベリが執筆した君主論について解説します。

君主論とは

フィレンツェの街並みフィレンツェの街並み

君主論とは、フィレンツェ共和国のニッコロ・マキャベリよって1532年に執筆された政治学の著作です。内容は、歴史上の人物や指導者、国家を例に出しながら君主が権力を維持し、国家の存亡を乗り越えるためにはどのように考え、行動すべきかを記載したものになります。

君主論は26編からなる著作であり、まず君主の種類を列記し、それぞれについて2章から11章にかけて解説しています。その後は君主が必要とする軍備を述べ、続いて君主のあるべき態度を述べています。最後に当時のイタリアについて、そしてそのイタリアの展望について述べています。

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マキャベリとは

フィレンツェの街並みフィレンツェの街並み

ニッコロ・マキャヴェリが生まれたのは1469年のフィレンツェ共和国です。彼は外交官で貴族であったり、弁護士もしていた父親とその妻の3番目の子供として生を受けました。

マキャベリの家はフィレンツェでは貴族階級であったものの貴族という割には生活は決してそれほど裕福ではありませんでした。1498年にマキャベリは29歳にしてフィレンツェ共和国の第2書記局長に選出されました。

当時、フィレンツェでは統治していたピサが統治下から離れたことが問題になっていました。海に面していないフィレンツェ取ってピサの港を統制下におくということは非常に重要でした。

フィレンツェは傭兵隊長のパオロ・ヴィテッリにピサを攻めさせましたが攻略に失敗。当時マキャベリもピサ攻略に参加していますが、フランスから借り受けた援軍が思い通り動かずピサ攻略は失敗し、フランスから同盟をも破棄されてしまうという苦渋を舐めます。

マキャベリはこれらの戦役から国民軍の重要性を認識することになりました。その後43歳で要職を説かれ隠遁生活にはいったマキャベリはその後農業や執筆活動で時を過ごすようになりました。

そこで国家の成長と安定のために、国家の君主がどのような思想を持ち、行動をするべきかという考えをまとめた「君主論」を執筆し、統治者であったメディチ家に提出しました。

マキャベリはメディチ家政権のもと執務を行っていましたが、メディチ家がフィレンツェから追放されるとマキャベリも職を失いました。マキャベリは同年に失意のうちに病死し58年の生涯を閉じました。

なお、マキャベリの代表的な著作としては、君主論のほかにも、ディスコルシ、マンドラーゴラ等があります。

君主論に書かれていること

フィレンツェの街並みフィレンツェの街並み

君主論には以下のようなことが書かれています。マキャベリが考える国家と君主のあり方が書かれています。

国家と君主と民衆

君主論は国家を共和国と君主国に分け、その中の君主国についてを述べています。なぜなら国家をよりよく統治をするには君主国が優れているとマキャベリが考えたからです。なぜなら世襲の君主は凡庸な統治をしているだけで国民から好感をもたれるからです。

ただし他国を征服する場合には、言語、制度などが異なる場合は統治は困難になります。その場合、征服した土地の旧有力者の血統を根絶やしにしたり、風習を維持したり、征服地に君主と軍の主力が移住するなどの対応が必要と説いています。

民衆というものは頭をなでるか、抹殺するかどちらかを行うべきであると君主論では説かれています。つまり住民は統治されるものであるとともに場合によっては君主に邪魔ともなりうるものであると解説しています。

征服に関する配慮

他国を征服する際には多くの配慮が必要であると君主論は述べています。他国を征服する際に注意すべきはその地域に隣接する外国についてであり、影響力が大きな強国が近くにある場合、その強国をも打ち倒すことによりより強固な支配が確立できると述べています。

君主論では、征服地を支配する場合の方法として、征服後国家や都市を滅ぼすこと、君主がそこに転居すること、征服地をある程度懐柔させるやり方があると説いています。

君主の力量について

君主論には君主に必要な力量や君主が行うべき政策が記載されています。君主論では、国家を興す際、君子の力量が不足していればその統治には失敗するとあります。君主に必要な力量、君主が行うべき政策には以下のようなものがあります。

敵の排除、味方の引き入れ、謀略、大衆と兵士からの畏怖と敬愛、政敵の排除、寛大な振る舞いと厳格な振る舞い、慎重さなどが君子に必要な力量であると述べています。

また残虐な行為は大胆に一度で済ませてしまうことが望ましいと述べています。逆に恩恵は小出しに継続的に行うことが望ましいと記載しています。

君主の気質について

君主論では君主にふさわしい気質について触れています。君主論では、君主は倫理的な行動にこだわれば、破滅をもたらすと説いていおり、君主は自身の身を守るためには善行ではない行いもしなければならないと解説しています。

君主は憐れみ深いという評判は好ましいが、それだけではなく、臣民に恐れられるために残忍であることも必要であると述べています。君主にとっては信頼は大事だが、それよりも謀略を駆使して大業を成し遂げた君子のほうが優れていることが述べられています。

君主の軍備

君主論では君主の軍備についても言及しています。マキャベリは、国家にとって重要なものはよい法律と武力である、と述べている通り、国を統治するいは軍備は欠かせないものであるという認識をしています。君主論では軍隊を、自国軍、傭兵軍、外国軍、混成軍に分類しています。

外国軍と傭兵軍は統制が難しく危険でさえあると実例を挙げて断言しています。傭兵軍は指揮官の能力と練度により戦争の成り行きに影響を与え、また外国軍も戦争終結後も自国に留まり続ける危険性があることが述べられています。

よって君主は国民で編成された自国軍を保有し、外部の軍事力に頼らない体制を構築することが重要であると説いています。軍事に無知は君主は恐れららず、武力のあるものは武力の無いものにひれ伏すことはあり得ません。

また、君主論では軍事訓練についても言及しており、その方法に実践的な方法と精神的な方法があることを説明しています。実践的とはつまり軍事訓練であり、精神的訓練とは歴史や戦術、指揮の学習です。

君主は嫌われることを恐れてはならない

君主は国民に嫌われることを恐れてはいけないと、マキャベリは述べています。君主は国民に嫌われるかどうかよりも、国を安泰にすること、国を理想敵にすることに集中するべきであると説いています。

悪事は最初にすべてやってしまえ

悪事は最初に見せつけ、権力を国民に誇示する必要があるとマキャベリは解きます。悪事や信用を毀損する行為は小出しにするのではなく、初めに一度にやってしまい、恐怖を強烈に植え付けたうえで国民を懐柔する様々な方法で国民を懐かせることが重要だと説きます。

ライオンと狐を使い分けろ

君主論では、君主はライオンの側面と狐の側面をうまく使い分ける必要があると説いています。ライオンは力があるが知略がなく、狐は力はないが知恵が働く。罠を見抜き敵から出し抜かれないためには狐である必要があり、強い敵を制する時にはライオンである必要がある。

本当の名君とは、信義を守ることで自分が不利になるときは信義を守るものではないし、守るべきでもない、人間はあなたへの約束を忠実に守るとは限らず、あなたも他人に信義を守る必要はない、と説いています。つまり、国家安寧のためには、信義に反したりすることもやむをえないといっています。

君主は愛されるより恐れられよ

君主論では、君主は国民に愛されるよりも恐れられるべきであると説いています。人間は計算高良い生き物であり、自分のためにならないものは切り捨てることがあるからです。

力量によって運命を掴み取れ

マキャベリ曰く、力量により運命に抗うことが君主のみならず生きるものすべてに通じることであると説いています。状況に流されるのではなく、己の運命を己が掴み取ることで道は開けるということを言い表していると思います。

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君主論の評価

フィレンツェの街並みフィレンツェの街並み

君主論は、マキャベリがメディチ家に仕官するために執筆したものだとも言われています。
このため、君主がどのような意思決定と行動をすべきかを具体的な実例を挙げて述べて言います。

当時フィレンツェを含めたイタリア地域は分裂状態であり、より強い統率力を持った強力な君主による統一が必要とされていました。そのためには宗教観念、倫理観や道徳観に引っ張られずに冷徹に国家の利益を追求し勢力を拡大することに注力ができる君主が必要であると君主論では説かされています。

しかしこのように国家安泰のために君主が現実的に行うべきことに注視した内容である君主論ですが、一方でマキャベリの思想は非道で宗教的倫理観に欠けるとみなされカトリック教会では禁書の一つとされ焼き捨てられもしました。

フランスのジャンティエやプロイセン王フリードリヒ2世も自身の著書にてマキャベリを批判しています。このようにカトリック教会の価値観に支配された中世ヨーロッパでは批判、非難をされた君主論でしたが、18世紀になると評価が上がってきます。

中でもルソー、モンテスキューやヘーゲルといった哲学者が君主論を支持していました。これによりマキャヴェッリの君主論は客観的で現実的な政治学の祖とされるようになりました。

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マキャヴェリズム

フィレンツェの街並みフィレンツェの街並み

マキャベリと君主論を論じるうえで避けることができない概念が、「マキャベリズム」です。マキャベリズムとは国家の利益のためであればたとえどのような非道徳的な手段であっても肯定されるという考え方です。

これが転じて、目的のためには手段を択ばない、または目的のためにはどのような手段をもってしてもそれが許される、という意味を指すこともあります。このマキャベリズム、権謀数術を重視する人間、またはそれを支持する人のことをマキャベリストとも呼びます。

マキャベリの名言一覧

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これまで君主論とマキャベリについて解説してきましたが、ここではマキャベリの名言について代表的なもの、参考に値するものを紹介します。マキャベリの名言には以下のようなものがあります。

  • 政治は道徳とは無縁である
  • 君主には悪徳も必要である
  • 君主は愛されるよりも恐れられよ
  • 武器無き人格者は滅びる
  • 人間は憎しみより、また恐怖心により人に危害を加える
  • 敵をつくりそしてこれを滅ぼせ
  • 運命の女神は、積極果敢な行動をとる人間に味方する
  • やむに已まれぬ時の戦いは正義でありほかに方法がないときの武力もまた神聖である
  • あなた自身の弱体化につながりそうな闘いは、絶対にしてはならない
  • 悪事は一度にやってしまい、恩恵は小出しに施すべきだ
  • 狼のどぎもを抜くためにはライオンでなければならず、策略のわなから身を守るためにはキツネのようでなければならない
  • 天気のいい日に嵐のことなど考えてもみないのは、人間共通の弱点である
  • 人に危害を加えるときは、復讐を恐れる必要がないほどに痛烈にやる必要がある大いなる意欲のあるところに、大いなる困難はない。
  • 民衆は群れをなせば大胆な行為にでるが個人となれば臆病である。
  • 常に心しておかねばならないことはどうすれば実害が少なくて済むかということである。
  • 君主はけちだという評判を恐れてはならない。
  • 人間は小鳥のような行動を取る。小鳥は目の前の餌だけに注意を奪われ、鷹が頭上を飛んでいるのに気が付かない。
  • たとえ人の生命を奪っても、財布に手をかけてはならない。人は父親を殺されたことは忘れても、遺産を失ったことは忘れないからだ。
  • 人間は恐れている人より愛情をかけてくれる人を容赦なく傷付ける。
  • いかなる手段もその目的にとって有効ならば、 正当化される。
  • 裏切り者を裏切るのは二重の喜びだ。
  • 人間の行動の動機には恐怖と敬愛の二つがある。
  • 謙虚という美徳で相手の尊大さに勝てると信じる者は誤りを犯す。
  • 人間は持ち物と名誉さえ奪わなければ不満なく生きる生き物である。
  • 自身の存亡に関わらない悪評は、避けられるなら避けたほうが良い。避けられないのならそのままでもよい。
  • 人間は些細な侮辱には復讐心を燃やすが強力な攻撃には屈するものだ。
  • 人間は必要に迫られて善を行う生き物である。
  • 君主の敵は内と外の両方にある。
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君主論のまとめ

イタリアの街並みイタリアの街並み

今回はマキャベリが執筆した君主論について解説しました。君主論はフィレンツェを統治するメディチ家のために執筆した政策の書ですが、これには分裂し抗争に明け暮れるイタリア地域への繁栄への願いが込められていました。

同時に、国家が秩序を維持するためには倫理や宗教観念に振り回されずに悪徳と非難されかねない行為も行う必要があるという強い意志が込められています。

キリスト教の世界観では悪徳の書として批判された君主論ですが、一方で外交や軍事、駆け引き、交渉、人や組織を制するという意味において、虚虚事実、合従連衡の世界では非常に有益な観念が書かれている著作でもあります。

嫌われることを恐れてはならない、偉業を成し遂げるためには必ずしも信義を守らなければならないとは言えない、契約には力による裏付けが必要、目的を達成するためには非道徳的な行為も正当化される、という人間の営みの中で当たり前で普遍的なことがたくさん書かれています。

君主論は「お花畑」の世界に住んでいるおめでたい皆さんにも、現実の世界が人の足物を見る者が利得を得ることができる適者生存と弱肉強食の社会であるということを直視させるきっかけになると思います。

私は東洋で最も優れた著作が「孫子」「三十六計」であるならば西洋における政略を論じた書物の中で最も優れた者は「君主論」であると思っています。君主論をよめば、皆さんが日ごろ人を出し抜いて自分の利得を極大化しようとする行為が正当であることがより根拠をもって現実的に理解できると思います。

君主論は政略を記述した最高傑作の一つです。ぜひ一度読んでみてください。

ABOUT ME
こんじゃるか
こんじゃるかブログを運営しているサラリーマン投資家です。中堅私大を卒業後、中小企業に就職、27歳で退職後大学院進学、大学院卒業後2011年から現職です。うつ病で休職→復職→再休職も経験してます。投資を始めFXを中心に、投資信託、高配当株、ソーシャルレンディングで資産運用中です。節約術も紹介します。
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