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昔の資産形成法 ~農村社会の資産形成方法について~

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資本主義を市場経済が発達した今日、投資や資産形成と言えば株式投資や投資信託による資産運用、または不動産投資が主流です。近代の農村社会ではどのような資産形成が行われていたかご存知でしょうか。

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現代とは社会背景は異なりますが、近代の農村社会でも資産運用や投資は行われていました。今回は、近代の農村の資産形成について解説します。

近代農村社会の資産形成方法

日本の庭園日本の庭園

ここでは近代農村社会における資産形成の方法を順を追って解説します。

節約する

資産形成の順序は現在も近代の農村も同じです。まずは支出を減らすために節約をします。
コメ農家では自家消費するコメを少なくすることにより販売できるコメの量を増やすことができます。

例えばどのようにして自家消費するコメを節約するかというと、まずコメはご飯としては食べずおかゆにします。それも表面に顔が映るような薄いおかゆです。そこに粟や稗等の雑穀やイモ類を入れてカサ増しをおこないます。

おかゆでは味が単調になるので、茶葉をいれてお茶の味をつけて食べる「茶粥」にしたりと
色々と工夫をします。このようにしてまずコメの自家消費量を最小限に抑えます。

米を最大限り売る

自家消費を抑えることにより最大限販売のために確保した米は市場に売却します。くず米はくず米で買い取ってくれるところがあります。そこに売却しますが売り物にならないものができるとそれは粥にして自家消費に回します。

「お百姓さんは一番いいものを残して、さぞかしうまい米を食べているのだろう」と言いますがそれは違います。お百姓さんはもっとも商品価値が高い部分を売却することにより収入を最大にするようにします。

商品作物を作る

米を作れる灌漑と水平面があれば田でコメを作ります。平地が少なかったり、水利がよくない土地があればそこで商品作物を栽培します。茶、菜種、綿、藍、これらを栽培し、現金収入の最大化に努めましょう。

養蚕

商品作物を栽培しつつ、傾斜地の山林を切り開き桑を植え、養蚕業をして繭を出荷し現金収入とします。コメは年一度しか収穫できませんし、コメの売却だけに頼っていては資産形成はできません。養蚕による労働集約労働でさらに収入を増やします。しかしこれはかなりの重労働です。

内職をする

天気の良い日、日のあるうちは農業をしますが、天気により農作業が行いにくい日もあります。そんな日はムシロを織ったり、草履を作ったり、組みひもを編んだり、ザルを編んだり、傘を貼ったり、笠を編んだり、蓑を作ります。これで夜なべの時間も現金収入のための行動に充てることができます。

鶏を飼い卵を売る

農家には庭や農作業小屋があります。この一部を改装して鶏を十数羽飼いましょう。鶏は毎日卵を産んでくれます。生まれた卵は自分では食べず、卵屋に買い取ってもらえるように手配しましょう。エサは菜っ葉や魚の骨など残飯でOKです。

これで卵が毎日現金収入を生んでくれます。卵を産まなくなった親鶏は仕方がないので家で絞めて食卓に並べましょう。貴重なタンパク源です。

山羊を飼う

山羊は貧農の乳牛とも呼ばれるほど良質で脂肪分の多い乳を出します。また粗食によく耐え急斜面での除草にも利用できます。

山林の資産を有効に活用する

山林があれば山林の資産を最大限有効に活用しましょう。

例えば松茸の収穫と販売、シイタケの栽培と販売、竹を伐採して竹細工を作って販売する、
また柴を取ってきて町に売りに行く、広葉樹は炭焼き小屋で炭にして販売する。落ち葉は全部サライでさらって持ち出し、田の肥やしにする、等です。

現実的に江戸時代から昭和初期にかけて里山は資源の過剰利用によりほとんどはげ山になっていたといいます。里山ではない山には針葉樹を植林して丸太を生産します。30年に一度伐採して木材として販売するためです。

作業の手伝いに行く

少しでも手が空いたら他家の作業の手伝いに行きます。日当を稼ぐためです。

日当稼ぎには、田植え係、稲刈りの追廻し、女性なら乳母やお手伝い、奉公に行くという手もあります。このようにして労働力と時間を現金収入と交換し最大限のキャッシュフローを得る努力をします。

田を購入し耕地面積を増やす

上のような生活を行い現金がある程度確保出来たら、田を購入し耕地面積を増やすようにします。耕地面積が増えれば米の収量が増えますので売却できるコメの量が増え、収入はさらに増えていきます。

田を購入し小作料を増やす

その次は増えた収入を使って新しい田の購入に臨みましょう。農村では田の多寡はその家の収益源ですので田の持ち主はなかなか田を手放したがりません。ですから周囲の家が金銭に困っているかどうかを見極めるところから仕事が始まります。

もしお金に困っている家を見つけたら、田を担保にしてくれれば資金を援助するということで資金の相談に乗ってあげましょう。そして田を担保にしてお金を融資します。契約通りの金利を払い元本を返してくれれば貸金契約は終了しますが、もし貸したお金の返済が滞るようなら代わり田を取り上げます。

借りた金を返すことができなかった家には、担保として取り上げた田を引き続き耕作してもらいます。その代わり、収穫の半分をこちらに収めるように契約を取り決めます。これで小作料が入ってくるようになりました。小作料はインカムゲインとなります。小作料で得たコメを現金化し税金を払った分が自分の取り分となります。

小作料でさらに田を増やす

小作田を得ることで小作料をとれるようになりました。これにより可処分所得が増えたことになります。増えた可処分所得は消費ではなく、田の購入に充てます。同じように田を担保に取りながら融資を行い、返済が滞った場合には田を接収しましょう。

そして同様に元の耕作者に田を作らせ、小作料を徴収するようにします。これを繰り返せば収入は雪ダルマ式に膨れ上がっていきます。

高利貸をする

小作料が入ってきたら家計の収入は倍増します。一年で相当な余剰が発生するでしょう。この余剰は消費に回すのではなく再投資に回しましょう。農村で行う投資と言えば、まず考えられるのが高利貸しです。貸金業です。

近代においては、利息制限法という法律はなかったと思います。返済金利の設定は貸す側と借りる側の力関係にのみ依存していたはずです。ですから、10日で1割、20日で2割など自由に金利を設定することができたでしょう。

これでお金に困っている可哀そうな人の人助けをしながら資産を増やしましょう。もちろん担保物件を取れればそれを小作に回して運用したり、他家に売却したりしてキャピタルゲインも狙っていきます。

上記を繰り返す

自家の村で購入できる土地がなくなったら、近隣の農村や遠隔地の農村での土地買収に動きましょう。近隣の農村にはおそらく家族の病気などで緊急に現金が必要な農家もいると思います。そういうところに喜んでお金を貸してあげましょう。

はじめは少しだけ借りていきますが、そのうち大きな金額を貸してほしいと向こうから行ってきます。その時は田や屋敷を担保にお金を貸してあげましょう、高利で。もし契約通り返済してもらえない場合は担保物件を手に入れましょう。そして小作料を収めてもらい、屋敷は賃貸料を払ってもらうようにしましょう。

農家は資産である土地に縛られて生きています。現代の無担保ローンのような形だと夜逃げされて姿をくらまされると手の打ちようがありませんが土地と屋敷を担保に取っておけば最悪夜逃げされても土地と屋敷が手に入ります。

これを繰り返すと、雪だるまさらに大きくなります。

産業資本家への転身

これらにより農村の農場経営と個人向けの高利貸でまとまった資金がたまったら、今度はそれを農業ではない分野に投資するようにします。例えば、信用組合や銀行の創業、水力発電所、保険事業、都市部の不動産開発、そして鉱業、製造業、運輸業や通信業、鉄道業、醸造業に出資し発展させましょう。

農業経営の経験を生かせば、外地からの穀物の輸入や外地での大規模農場の権利獲得にも動くことできます。外地の広大な土地を開発し、安価に買い取った大豆、綿花、米を内地に輸送すれば莫大な利益を手にすることができます。海運業や外地の鉄道業、造船業にも出資すれば、そこそこの財を成すことができるかもしれません。

政治家へ転身

資金がある程度貯まったら多少慈善事業も行い選挙拳のある高額納税者からの名声を集めましょう。それから村会議員、村長、町会議員、町長を経て県議会議員となり、中央政界への足掛かりとしましょう。

実業で功績を残し「国家に勲功ある者」として政府に認められれば、爵位が得られ、新華族に加えられました。近代の実業家で華族に列した事業化はたくさんいます。華族になれば財産を没収されない権利、皇族と結婚する権利、貴族院議員となる権利などが与えらました。

婚姻政策

農村の地主や資本家、政治家としての将来を考えるならば自身や家族の婚姻も重要な成長戦略の一つです。縁組をするのは、地元の名家や名望家とし、子息、娘も出来るだけ裕福で権威をもった家に嫁がせたり、妻を迎えるように采配を振るいましょう。

婚姻政策により勢力を拡大した家系は歴史も数多くあります。ヨーロッパのハプスブルグ家、日本でいえば藤原不比等につらなる藤原家、鎌倉幕府の得宗である北条家など例を挙げるときりがありません。

子弟の教育政策

子弟の教育政策は資産の蓄積とともに事業を永続的に行うために重要なことです。子供の才覚を見極め、商才や数字に明るい者は中学を卒業させたのちは都市部の商業専門学校に送り出し、出来れば帝国大学に入学させます。

勤勉でまじめなものは師範学校へ。文武両道のものは海軍兵学校や陸軍士官学校に入学させ、陸軍大学校を卒業し参謀になる道を作らせます。

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近代の資本家のその後

日本の庭園日本の庭園

このブログでは農村からの資産形成方法を紹介したわけですが、この近代の農村出身の資本家たちがその後どうなったかを説明しましょう。

実は戦後農地解放という政策により、小作地を抱えるほどの大規模な土地を持っていた地主は、自家で耕作する面積以上の分を安い値段で小作人に解放しなければならなったのです。これで小作料に依存し生計を立てていた豪農のほとんどは没落してしまいました。

また産業資本家として成功していた資本家も急激なインフレと社会構造の変化に対応出来ないものは退場を余儀なくされました。

海外の植民地で投資や事業を行っていた人も同様です。しかし中には、特定郵便局長や市会議員として地元の名士として一定の地位を確保したり、戦前の基盤を基に戦後の混乱期を乗り越えて事業を拡大した資本家もいたことは事実です。

昔の投資についてのまとめ

日本の庭園日本の庭園

今回は、近代の農村地域での投資方法、資産形成から、産業資本家に発展する軌跡について解説しました。近代はまだ法律が整備されておらず、現代とは背景が異なりますが、貯蓄による余剰の発生、そしてその余剰の再投資による資産と事業の拡大という流れは全く変わっていません。

ある程度の自制と計画性は必要ですが、これらは身分の高貴さ、低さ、出自に関係なく誰でもできることです。三国志の蜀の皇帝劉備は琢県の蓆売りから身を起こし、明の太祖朱元璋は食べるものがなく、家族が餓死するような境遇から王朝を起こし明の初代皇帝となっています。

近代も現代も資産形成は初期段階において雪だるまの芯を作るまでは一番大変です。この段階を乗り切れば、あとは雪だるまは自分で転がってどんどん大きくなります。

みなさん、雪だるまという名の資産を形成し、自分が誰の命令も受けることがない、本当の自由をつかみ取りましょう。資産をつかみ、働かなくていい自由、意思決定の自由、好きなことをできるお金をつかみ取っていきましょう。

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こんじゃるか
こんじゃるかブログを運営しているサラリーマン投資家です。中堅私大を卒業後、中小企業に就職、27歳で退職後大学院進学、大学院卒業後2011年から現職です。うつ病で休職→復職→再休職も経験してます。投資を始めFXを中心に、投資信託、高配当株、ソーシャルレンディングで資産運用中です。節約術も紹介します。
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