2018年の通常国会から「働き方改革」に関する議論が繰り広げられ、2019年4月から年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し有給休暇を年5日取得させる義務が企業に課されることになりました(30万以下の罰則付き)。
先日は就職活動する際には、年間休日ができるだけ多い会社に就職することについて解説しました。
年間休日は就職するうえで非常に重要な要素ですが、もう一つ絶対に抑えなければならないことは有給休暇消化率です。
有休消化率は就職後の休みの取りやすさと仕事の満足度を決定づける非常に重要な要素です。就職活動で求人に応募する際には、企業の有給休暇消化率を確認しましょう。本日は有給休暇消化率について解説します。
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目次
有給休暇とは~正式名称は年次有給休暇~
有給休暇は正式名称を年次有給休暇といいます。一般的に「年休」「有給」とも呼ばれ、
会社を休んでも給料が出る休みのことです。有給休暇は、6か月以上勤務し、労働日の8割以上出勤した労働者に対し与えられなければならない、と労働基準法にて定められている法定休暇です。
年次有給休暇という名の通り、年数を経るごとに一定日数が加算され、最大で20日が与えられるよう定められています。上では法律上最低限与えなければならない有給化日数であり、それ以上の日数を与えることは企業が任意に設定することができます。たとえば、
- 初年度から20日間の有給休暇を付与する
- 年間で20日以上の有給休暇を付与する
などが行われています。
もし従業員から有給休暇申請があった場合は、企業は原則的に希望日に有給休暇を与えなければなりません。ただし、業務上支障をきたす場合には、時季を変更させることができます。(時季変更権といいます)また、有給休暇の取得をする場合、その理由を告げるは義務もありません(会社は従業員に理由を問う行為にも罰則はありませんが)。
有給休暇の期限
有給休暇の期限は、年次有給休暇が付与さえた時点から起算して2年です。もし2年間の間に有給休暇の取得をしなかった場合は、有給休暇は無効となります。
有給休暇取得消化率とは?
それでは次は有給休暇消化率について見ていきましょう。
厚生労働省による「就労条件総合調査」では2017年の平均有給休暇取得率は51.1%という調査結果が出ています。政府が目標としている2020年までに平均有給休暇取得率70%を達成するという数字に届いていません。また、事業所の規模と有給消化率の相関関係を見ると、事業規模が大きいほど有給消化率が高いことが分かっています。
年間有給消化率を事業所の従業員数で分類してみると以下のようになります。
1000人以上 10.6日
300~999人 8.8日
100~299人 8.2日
30~99人 7.5日
業種別の有給消化率を見てみると
有給消化率が高い業種は
電気・ガス・水道業
複合サービス業
情報通信業
製造業
金融業
等で、逆に有給消化率が低い業種は、
宿泊、サービス業
卸売、小売業
生活関連サービス業、娯楽業
建設業
教育、学習支援業
となっています。個人に対し物やサービスを提供する業態で有給休暇が取りにくい傾向が浮き彫りになっています。
具体的に有給消化率が高い企業を見ていくと、ホンダ技研及びホンダ系部品メーカーのショーワ、ケーヒン、テイ・エス テックホンダなどが目につきます。ホンダ技研は有給休暇の未消化繰り越しをなくす運動を1970年代から取り組んでおり、それが系列の部品メーカーにも波及している様子が見て取れます。同じくトヨタ自動車系企業でも有給消化率が高く、輸送機器メーカーに有給消化率が高い傾向がよくわかります。
諸外国の有給休暇取得率
諸外国の有給休暇取得率は以下の通りです。
欧州連合
欧州連合では、加盟国となる条件に労働者に対し最低4週間の有給休暇を付与することを条件にしています。ヨーロッパでは有給休暇は使い切るのが当たり前という認識が浸透しており、有給消化率も極めて高いのが特徴です。
アメリカ合衆国
アメリカでは、休暇の設定はあくまでも雇用者と被雇用者という労使の協議によるものであるとの認識が強く、このため、有給休暇付与を義務付ける法律は存在しません。ですがこのような状況の中でも企業は従業員に対し有給休暇制度を実施しており、法律に頼らない交渉と契約の文化が根付いていることが裏付けられています。
日本では有給休暇は取りづらい?
日本人は外国にはない特有の理由で有給休暇を取ることに対し、しり込みする方がいることも事実です。ではその理由を見ていきましょう。日本人が有給休暇を取り渋る理由は以下のようなものが挙げられます。
- 周りに迷惑がかかると考える
- 慢性的な人員不足
- 属人的業務
- 突発的な業務が多い
- 休むと次の日が忙しくなる
- 暇だと思われる
- 有給休暇をたくさん取得することで人事考課に負の影響が出るのではないかという心配
- 休むことを良くないこととする雰囲気
- 仕事に余裕があるとみなされ業務量が増えることを危惧する
- 業務量が追い付かなくて休んでいられない
- 体調不良のときのために残しておきたい。
等が挙げられます。
有給休暇を取りやすくするための対策
有給休暇を取りやすくするためには以下の施策が有効だとされています。
- 半日有給制度の推進
- 年次有給休暇の計画的付与
- 有給休暇による一斉休暇の実施
- 有給休暇が取りやすい企業風土の育成
- 有給休暇を取った人への手当
- 部門ごとの有給休暇状況の見える化
- 有給を採れる人が優秀な人という意識改革
有給消化率を高めるメリット
遅くなりましたが有給消化率を高めることで企業、従業員にどのようなメリットがあるかを紹介します。
- モチベーションの向上
- 離職率の低下
- 優秀な人材を確保しやすい
- リフレッシュ効果による生産性の向上
- 十分な休養による体調不良者の減少による稼働率の向上
まとめ
就職活動で注目すべき項目はズバリ以下の通りです。
- 平均年収
- 基本給の高さ
- 一時金について(ボーナスの平均支給月数)
- 年間休日数
- 福利厚生(企業年金など)
と有給消化率です。
有給休暇は、心身の疲れを取り、ゆとりがあり充実した生活を保障し業務の効率化と従業員のモチベージョンの向上に欠かせない制度です。
就職活動、転職活動では、年間休日だけでなく、有給消化率の情報をできるだけ収集し、応募する会社が従業員の有給休暇取得に努めているかどうかを確認することが非常に重要です。
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サラリーマンは与えられた権利である有給休暇を完全に消化し、健康で文化的でライフワークバランスの取れた人生を送れるようにしましょう。